PCoMS/ISSPとは
1PCoMSのプロジェクト目的
“計算物質科学人材育成コンソーシアム(Professional development Consortium for Computational Materials Scientists: PCoMS)”は、材料科学・物性科学・分子科学・材料デザインを中核とする物質科学分野で世界をリードする東北大学、東京大学、自然科学研究機構分子科学研究所、大阪大学によって、文部科学省「科学技術人材育成のコンソーシアムの構築事業(次世代研究者プログラム)」の採択を受け、2015年8月に設立されました。
本コンソーシアムでは、広範な物質科学領域と材料開発の基礎、応用、実用化の全段階を俯瞰しつつ、ハイパフォーマンスコンピューティング技術を駆使して物質科学分野の課題発見と解決ができる人材育成の環境を整備し、若手研究者の安定雇用につながる仕組みを構築をしてまいります。 その対象として、下記の2タイプの研究者を育成します。
1)先鋭化された材料科学・物性科学・分子科学の専門性に加え、物質科学全体の素養を持ち、基礎から応用まで全体を俯瞰しつつ、ハイパフォーマンスコンピューティング技術を駆使した最先端の計算物質科学研究を進める次世代グローバルリーダーとなる若手研究者(次世代研究者)。
2) 計算物質科学の幅広い素養とハイパフォーマンスコンピューティング技術を持ち、かつ、長期インターンシップ等による所属機関以外の異なる研究環境を経験し、企業のニーズ等の理解や国際的な研究動向等を理解したポスドクや博士課程(後期)学生(イノベーション創出人材)。
2PCoMS/ISSPでの取り組み
ISSPは共同利用拠点として、保有するスーパーコンピュータを全国の物性科学の研究者に提供しています。さらに、スーパーコンピュータをより有効に活用するため、ソフトウェア開発・高度化や物質科学シミュレーションのポータルサイト(MateriApps)の運営などの活動に力を入れ、大学の専門家だけでなく実験家・企業研究者にも高度計算技術の展開を図っています。
PCoMSの活動では、この拠点の活動領域を材料と分子を含む計算物質科学分野に拡張します。ISSPでは特に、理論と実験、基礎と応用(含産業界)といった領域を計算物質科学で“つなぐ”人材の育成を強化します。さらに、PCoMSの若手研究者・ポスト「京」のプロジェクトを推進する研究者などに対して共同利用スーパーコンピュータの全計算機資源中の20%を提供することで、ハイパフォーマンスコンピューティング技術を駆使し、かつ、ISSPの実験装置も含めた全国の共同利用ユーザーとの交流から得られる情報を活かした、イノベーション創出のトリガーとなる、“つなぐ”領域の最先端研究を伸ばしていきます。
2-1イノベーション創出人材の育成
博士課程で培われた計算物質科学の高い専門性はその分野の専門家として活躍する上で不可欠な知識であることは言うまでもありませんが、社会において新しいイノベーションを生み出す上でも重要な基盤となりうるものです。そこで重要となってくることは専門性を高めるのと同時に、自分の専門性が社会の中でどの様に位置付けられるのか常にアンテナを張り巡らせておくことです。研究室の中に閉じこもっているだけでは関係性はなかなか見えてきません。研究室の外に飛び出すことで、自分の専門と他者、大学、企業、地域との関係の理解が促され、イノベーションを生み出すための新しい芽を見つけることができるかも知れません。イノベーション創出人材育成プログラムでは長期インターシップ等による所属機関以外の異なる研究環境を経験し、社会・企業のニーズや国際的な研究動向等を理解した博士課程後期(DC)やポスドク(PD)を育成することを目的としています。また本プログラムにおいて計算物質科学の幅広い素養とハイパフォーマンスコンピューティング技術を身につけて頂きます。社会・企業のニーズや国際的な研究動向等を理解して、産業界などでイノベーションを創出する人材をめざしてみませんか?
2-2次世代研究者の育成
物性研究所では計算物質科学の次世代研究者の育成活動として以下の取り組みを行っています。
1)若手研究者の支援
若手研究者が独立した研究をおこなえる環境を整えるとともに、 メンター制によるサポートを行っています。また、若手研究者の研究活動を推進するために、各研究所のスーパーコンピュータの資源提供と研究支援人材の採用を行っています。
2)ソフトウェア高度化・普及活動
スーパーコンピュータを効率的に活用するため、ソフトウェアの重要性は今後高まっていくことが予想されます。物性研究所では、若手研究者が主体となり、計算物質科学で用いられるソフトウェアの開発・高度化及び公開や、既存のソフトウェアの紹介を行なうポータルサイトMateriAppsの運営といった活動を行います。これらの活動を通し、計算物質科学全体を俯瞰した、大局的な視点をもった若手研究者の育成を目指します。
3)キャリアアップ研修
専門家の講師による、ビジネスコミュニケーションスキル、オープンイノベーションスキルに関する研修会を開催しています。ビジネスコミュニケーションスキルに関する研修会では、現役アナウンサーの指導のもと、プレゼンテーションや面接、研究提案のスキルアップを図っています。また、イノベーションスキルに関する研修会では、ビジネスの現場でのオープンイノベーションの実例を踏まえた講演を通じて、従来の研究者の枠を超えた活動の芽を育てています。
これらの活動を通じて、既存の研究分野の枠を超えた研究を推進していきます。